マレーシアはイスラム教を国教とする多民族国家であり、国民の約60%がムスリム(イスラム教徒)です。そのため、イスラム暦(ヒジュラ暦)に基づいて毎年行われるラマダン(断食月)は、マレーシアにとって非常に重要な期間です。この記事では、マレーシアにおけるラマダンの習慣や文化、経済への影響、観光客が注意すべきポイントなどをわかりやすく紹介します。
ラマダンとは?
ラマダンは、イスラム教において神聖な月とされ、ムスリムは日の出から日没まで飲食を控え、精神を清める期間です。断食の目的は、自己制御を強化し、貧しい人々の苦しみを理解し、信仰心を深めることにあります。
ラマダンはヒジュラ暦の9月に行われるため、毎年10日ほど前倒しになり、西暦では毎年異なる時期に訪れます。断食は「サウム」と呼ばれ、夜明け前の食事「スフール」と日没後の食事「イフタール」に分かれます。
マレーシアの2025年のラマダン(断食月)は、3月1日から3月31日頃までとされています。 ただし、ラマダンの開始と終了は新月の観測に基づいて決定されるため、国や地域によって若干の違いが生じることがあります。
マレーシアにおけるラマダンの習慣
マレーシアではラマダン中、多くのムスリムが以下のような行動を取ります。
断食の実践
マレーシアのムスリムも日の出から日没まで一切の飲食を控えます。特に日中は喉が渇きやすいため、スフールの際に水分補給をしっかり行います。
ラマダン・バザールの開催
ラマダン期間中、各地で「ラマダン・バザール」と呼ばれる特別な市場が開かれます。ここでは、イフタール(断食明けの食事)用の料理やスイーツが販売され、ムスリムだけでなくノンムスリムの人々や観光客にも人気があります。
特に有名なラマダン・バザールの例として、以下の場所があります。
クアラルンプール:Pasar Malam Masjid India
クアラルンプール:TTDIラマダン・バザール
ペナン:Gurney Drive Bazaar
ジョホールバル:Bazaar Ramadan Bandar Baru Uda
特別な礼拝「タラウィー」の実施
ラマダン期間中、ムスリムは通常の5回の礼拝に加えて、「タラウィー」と呼ばれる夜の特別な礼拝を行います。多くの人がモスクに集まり、コーランの朗読を聞きながら祈りを捧げます。
ラマダンがマレーシア社会に与える影響
企業や学校のスケジュールの変更
ラマダン期間中は、政府機関や企業の勤務時間が短縮されることが一般的です。例えば、公務員は通常より1〜2時間早く退勤する場合があります。また、学校でも授業時間が短縮されることがあります。
飲食店の営業形態の変化
ムスリム経営のレストランは日中の営業を控えたり、テイクアウトのみの営業を行うことがあります。ただし、ノンムスリム向けの飲食店は通常通り営業しています。
交通機関の混雑
日没後のイフタールに合わせて、多くの人が帰宅を急ぐため、夕方の時間帯は渋滞が発生しやすくなります。
ラマダン中の観光客の心得
マレーシアを訪れる観光客にとって、ラマダンは特別な文化を体験できる貴重な機会ですが、以下のポイントに注意が必要です。
公共の場での飲食に配慮する
ムスリムが断食をしている間、公の場での飲食は控えるのがマナーです。ただし、観光客向けのレストランやホテル内では通常通り食事ができます。
服装に注意する
ラマダン期間中は、宗教的な意識が高まるため、肌の露出が多い服装は避け、控えめな服装を心がけましょう。
ラマダン・バザールを楽しむ
ラマダン・バザールは観光客にも開かれており、マレーシアの伝統的な料理を楽しむ絶好の機会です。地元の人々と交流しながら、美味しい料理を味わってみてください。
ラマダン明けの「Hari Raya Puasa(ハリラヤ・プアサ)」
ラマダンが終わると、ムスリムにとって最も重要な祝祭日Hari Raya Puasa(ハリラヤ・プアサ)、Hari Raya Aidilfitri(ハリラヤ・アイディルフィトリ)が訪れます。日本では「断食明け大祭」として知られ、家族や友人と祝う特別な日です。
この期間には以下のような習慣があります。
- モスクでの特別な礼拝
- 親族や友人宅を訪問し、「Selamat Hari Raya」と挨拶する
- 伝統料理を食べる
ハリラヤ期間中は多くの商業施設が休業するため、観光の計画を立てる際には注意が必要です。
マレーシアにおけるラマダンは、単なる断食の期間ではなく、精神を清め、家族や地域社会とのつながりを深める重要な行事です。観光客として訪れる際には、ラマダンならではの文化を尊重しつつ、ラマダン・バザールなどを楽しむことで、マレーシアの魅力をより深く感じましょう。
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